なんとなく体が重い、疲れやすい、肌の調子が悪い…それ、腸が荒れているサインかも!? 腸は、私たちの健康を大きく左右しますが、腸内環境が悪化していても、自覚しにくいことが多いのが現実です。身近なサインを見逃さないために知っておくべきことを、京都府立医科大学・内藤裕二教授に伺いました。
食生活が原因?腸不調サインを見逃さないで
現代の日本人の腸内環境は悪化しやすい
近年の腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)の研究で、健康な腸には「多様な腸内細菌がいること」が重要であるとわかってきました。驚くことに、食生活が豊かな先進国の人々よりも、食事の選択肢が限られているアフリカの原住民のほうが、腸内細菌の多様性に富んでいるのです。
彼らは食べられる物が少ない分、腸内細菌の力を最大限に活用し、栄養を補いながら健康を維持しています。例えば、サツマイモしか食べていないのに、腸内細菌の働きによって栄養を補い、筋肉隆々だったりするのです。
一方、先進国の都市で暮らす人々は、何でも自由に食べられる食生活の便利さと引き換えに、腸内細菌の多様性を失ってしまいました。これが、現代病や慢性疾患の増加につながっていると考えられています。
特に日本人は、もともと農耕民族であり、動物性たんぱく質をあまり摂らない食生活を長く続けてきました。しかし現在は、肉や揚げ物、甘いもの、お酒を自由に楽しめるようになり、腸の健康を維持しづらくなっています。そのため、日本人こそ「腸活」が必要なのです。
自由な食生活が引き起こす「腸荒れ」
好きなものを自由に食べることができる現代の食生活は、腸にとって負担が大きく、「腸荒れ」や「腸疲労」といった状態を引き起こします。これが進行すると、健康だけでなく、自律神経や認知機能、免疫機能にも悪影響が及びます。
しかし、現在の研究では「腸内疲労度」を測る明確な基準はまだ確立されていません。腸内細菌の研究は日々進化しており、新たな発見が続いています。現時点でわかっていることとして、以下の症状が腸の不調のサインである可能性が高いとされています。
腸荒れサイン
✅ 便秘
腸内環境が悪化すると排便のリズムが乱れ、便秘になりがちです。便秘は心筋梗塞、パーキンソン病、慢性腎疾患の発症リスクを高め、認知機能の低下を早めることがわかっています。
✅ 下痢
腸が過敏に反応しやすくなることで、頻繁な下痢が起こることもあります。下痢は便秘よりも精神的ストレスが大きく、長期的には便秘のほうがより危険だとされています。
✅ オナラが臭い
強い悪臭のオナラが頻繁に出る場合は、腸内の悪玉菌が増えている可能性があります。特に動物性たんぱく質の過剰摂取が原因で、腸内発酵がうまく機能していないことが考えられます。
「腸荒れ」のとき腸では何が起こっているのか?
「腸荒れ」が進行すると、腸内では以下のような問題が発生します。
・ 腸の免疫機能が低下する
・ 腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が鈍くなる
・ 微小循環(びしょうじゅんかん)が悪化する
・ 腸の細胞同士の接着が弱まり、腸のバリア機能が低下する
・ 老化細胞が増加する
こうした腸のダメージを放置すると、さまざまな疾患の引き金となります。これを防ぐために、腸活を積極的に取り入れることが大切です。
「腸荒れ」を改善するための腸活
腸内環境を整えるためには、日常生活の見直しが不可欠です。特に重要なのは以下の3つのポイントです。
① 食生活を改善する

✅ 腸に良い食材を積極的に摂る
・ 食物繊維(野菜・海藻・豆類など)
・ 発酵食品(ヨーグルト・納豆・味噌・漬物など)
・ オメガ3系脂肪酸(青魚・亜麻仁油・えごま油など)
・ オリゴ糖(玉ねぎ・バナナ・はちみつなど)
✅ 腸に悪影響を与える食材を控える
・脂肪・糖分・塩分の多い食品(スナック菓子・加工食品など)
・動物性たんぱく質の過剰摂取(特に赤身肉・加工肉)
・アルコールの飲みすぎ
→ 腸活に良い食べ方について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
② 7時間の睡眠を確保し、適度な運動を心がける

腸内細菌と睡眠には相互関係があります。日本人は6~7時間の睡眠が必要とされており、睡眠不足は腸内環境の悪化につながります。
また、日常的な運動も腸にとって重要です。
ジムに行く必要はなく、生活の中で**「ちょっと体を動かす習慣」**を増やすだけで十分な効果が期待できます。
✅ 生活の中でできる簡単な運動
・エスカレーター・エレベーターを使わず階段を利用する
・電車では座らずに立つ
・車の代わりに徒歩移動を増やす
→ 腸内年齢をチェックしてみたい方は、こちらの記事をご覧ください。
③ 自律神経を整える生活リズムを意識する

腸の蠕動運動は自律神経によってコントロールされているため、生活リズムが乱れると腸内環境も悪化します。
✅ 腸活に良い生活習慣
・毎日同じ時間に起きる
・朝食をきちんと食べる
・日中は太陽を浴びる
・夜は決まった時間に寝る
→ 腸活に効果的な生活習慣について、詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
理想的な腸の状態とは?
理想の腸内環境は、「腹痛や腹部膨満感がなく、スムーズに排便できる状態」です。
理想的な便の状態は、
✅ 表面がなめらかで柔らかいソーセージ状
✅ とぐろを巻けるような適度な硬さ
を目標にしましょう。
腸は「第二の脳」とも呼ばれるほど、私たちの健康に深く関わっています。健康な腸を保つことが、心身の健康への近道です。今の生活を少し見直し、今日から腸活を始めてみませんか?
今回教えてくれたのは…
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京都府立医科大学大学院 生体免疫栄養学教授 : 内藤裕二さん
消化器専門医として最新医学に精通し各地で講演も行っている。消化器病学や消化器内視鏡学、生活習慣病の他、健康長寿や抗加齢医学、腸内フローラや酪酸菌研究も専門としており、「京丹後長寿コホート研究」で腸内フローラ解析に携わっている。酪酸菌と健康長寿の関係などの研究をはじめ、長年腸内細菌を研究し続けている本領域の第一人者。
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