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腸を良い状態にすることで体が元気になるテクノロジー

近年、食物アレルギーを持つ子どもが増えていると言われています。2022年の調査によると、全国の公立小中高校に通う約52万7000人の子どもが食物アレルギーを持っているという結果が発表されました(公益財団法人・日本学校保健会調べ)。2013年の前回調査から約12万人増加しており、親御さんにとっては大きな不安材料となっています。
しかし、「アレルギーは遺伝だから仕方ない」と思っていませんか?実は、腸内環境を整えること(腸活)がアレルギー対策につながる可能性があるようです。

子どもの食物アレルギー増加の原因は…

京都府立医科大学の内藤裕二教授によると、近年の「赤ちゃんに食べさせる食事の偏り」がアレルギー増加の一因になっている可能性があるといいます。
「最近では市販の離乳食なんかが便利なので、簡単に食べさせられる点では良いのですが、あれだけを食べさせていたら、幼少期にさまざまな食材を摂取して異物に慣れていく体を作ることは出来ません。様々な食材で手作りのご飯を食べさせることでアレルギーを防ぐ反応が育つのです。」(内藤教授)

腸内細菌が作り出す「短鎖脂肪酸」がアレルギー対策に!

では、具体的にアレルギーを発症している子供達には、どのような対策ができるのでしょうか。
内藤教授によると、注目すべきは、腸内細菌が生成する 「短鎖脂肪酸」 という成分です。
「短鎖脂肪酸は、腸内細菌が食物繊維を発酵することで作り出す成分で、酢酸・プロピオン酸・酪酸 などがあります。これらは 腸内環境を整えるだけでなく、体全体の炎症を抑える働き を持っています」(内藤先生)

中でも、酪酸には アレルギー反応を抑制する免疫細胞(Tレグ=制御性T細胞)を増やす効果があることが研究で明らかになっています。
Tレグ細胞は、免疫の過剰反応(アレルギー反応)を抑える「ブレーキ役」となる細胞です。アレルギーは、体の免疫機能が暴走し、本来害のない花粉や食べ物の成分を敵とみなして攻撃してしまうことで起こります。Tレグ細胞が十分に機能すれば、この「免疫の暴走」を抑え、アレルギー症状の発生を防ぐことができます。つまり、腸内で「短鎖脂肪酸」、特に「酪酸」を増やすことが、子どものアレルギー対策につながるようです。

意外と簡単⁉︎ 短鎖脂肪酸を増やすための「食習慣」

では、短鎖脂肪酸を増やすためには、どのような食生活を心がけるといいのでしょう。
「推奨は、10歳以上の人は1日あたり 25gの食物繊維を摂取すること」(内藤教授)
これは、小鉢のきんぴらごぼう約8杯分に相当。さすがにその量を毎日食べるのは、至難の業です。実際に、現状では日本人の食物繊維摂取量は不足しがちのようです。
ちなみに2〜5歳は15g、6〜9歳は21gとされています。
でも安心してください。忙しい子育て家庭でも実践しやすい方法があるようです。

内藤先生推奨、「はやウマ短鎖脂肪酸チャージメニュー」

実は「炊き立てご飯」よりも「冷ましたご飯」のほうが、1.6倍も短鎖脂肪酸を増やすというデータがあります。
「これは、ご飯を冷やすことで生まれる 「レジスタントスターチ」 という成分のおかげです。レジスタントスターチは、小腸では吸収されずに大腸まで届いて腸内細菌のエサとなって発酵し、善玉菌の増殖をサポートする役割と、善玉菌に短鎖脂肪酸を作らせる役割をもつ、二刀流のスーパープレイヤーです」(内藤教授)
つまり、ご飯はおにぎりにして食べるだけで、腸活になるということです。

朝の忙しい時間にサッと食べられるシリアル食品も、短鎖脂肪酸を増やすのに最適な食材。コーンフレークなどのシリアルには レジスタントスターチが豊富に含まれています。特に、全粒穀物を使ったシリアルは食物繊維が多く、腸内環境を整えるのにぴったり です。
「ヨーロッパの人々は、日本人よりも圧倒的に食物繊維の摂取量が多いですが、その理由の一つがシリアルの食習慣にあると考えられています。」(内藤教授)

まとめ:

子どもの食物アレルギーは年々増加しているが、腸活で対策できる可能性がある

短鎖脂肪酸(特に酪酸)がアレルギー反応を抑えるカギ

短鎖脂肪酸を増やすために、1日25gの食物繊維(2〜5歳は15g、6〜9歳は21g)の摂取を目指そう

「冷ましたご飯(おにぎり)」や「シリアル」に含まれる「レジスタントスターチ」が短鎖脂肪酸を増やす近道

食生活の見直しが、子どもの腸内環境を整え、アレルギーの発症リスクを抑えられる可能性があります。忙しい日々の中でもできる範囲で、腸活を取り入れてみませんか?

今回教えてくれたのは…

  • 京都府立医科大学大学院 生体免疫栄養学教授 : 内藤裕二さん

    医学博士。京都府立医科大学大学院医学研究科教授(生体免疫栄養学)。京都府立医科大学卒業。最新医学に精通し、多数の著書、論文の発表、各地で公演も行っている。消化器病学、消化器内視鏡学、抗加齢学、腸内細菌のエキスパート。

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  • ライター

    田口 拓矢

    北海道の網走という田舎町から上京後、放送作家としてバラエティ番組を中心に約10年活動。業界特有の『不健康生活』という名の”劣悪監獄”から脱獄を目指し、様々な健康法を日々チャレンジ中!

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