ダイエットを頑張って食事を減らしているのに、なかなか体重が落ちない…。
そんな悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか?
実は、食事制限だけで痩せようとするのは 効率的とは言えません。近年の研究では、腸を鍛えることが「太りにくい体づくり」のカギになると考えられています。
太りにくい人と太りやすい人の違いとは…
エネルギーの行き先で決まる「燃焼型」と「蓄積型」
「同じ食べ物を食べているのに、太る人と太らない人がいるのはなぜ?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?
京都府立大学大学院の青井渉准教授によると、この違いは食事から得たエネルギーがどこに行くかによって決まるといいます。
✅筋肉にエネルギーが流れやすい人は、エネルギーを燃焼しやすく太りにくい
✅脂肪にエネルギーが蓄積しやすい人は、エネルギーをため込みやすく太りやすい
「筋肉はエネルギーを活発に消費する組織ですが、脂肪組織はエネルギーを蓄積しやすい組織です。つまり、エネルギーの流れ先の違いが、体型に大きな影響を与えるのです。このエネルギーを筋肉に流れるようにするのは、筋肉が活発な状況である必要があります。そのためには日頃から筋肉を鍛えて、エネルギーが筋肉に流れやすい“下地”を作っておく必要があるのです。」(青井先生)
「腸が崩れると、筋肉も崩れる」—腸バリア機能の低下が招く代謝ダウン

画像出典:青井先生の研究資料より
筋肉の働きが弱まる理由として、「腸内環境の悪化」が関係していることが分かっています。
「腸内環境が乱れることでバリア機能が正常に働かず、体に不要な物質が筋肉へ侵入してしまいます。
これにより、筋タンパク質の分解が進み、血糖や脂肪の消費が低下し、結果的に代謝が落ちる という現象が起こります。つまり、腸内環境が崩れると体のディフェンス機能が弱まり、毒素や細菌などの有害物質が筋肉に悪影響を及ぼしてしまうのです。」(青井先生)
「腸から筋肉へ」—短鎖脂肪酸が秘める“強さのスイッチ”
「腸→血液→筋肉」 短鎖脂肪酸が動かすエネルギールート
では、腸内環境を整えて筋肉を強くするためにはどうすればよいのでしょうか?
そのカギを握るのが「短鎖脂肪酸」です。
短鎖脂肪酸とは?
👉 腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖を発酵させることで作り出す代謝物質
👉 代表的なものに「酢酸」「プロピオン酸」「酪酸」がある
短鎖脂肪酸は、腸内で産生された後、血液に乗って全身へと運ばれます。その中でも筋肉に到達した短鎖脂肪酸は、エネルギー代謝を促進するスイッチを押す役割を果たしているのです。
「腸内で産生された短鎖脂肪酸は血流に乗り、筋肉へと運ばれます。筋肉に到達すると、ミトコンドリアの増加を助ける働きを持つことが分かっています。」(青井先生)
短鎖脂肪酸が筋肉の成長をサポート
短鎖脂肪酸の中でも「酪酸」と「プロピオン酸」は、筋肉のエネルギー発電所となる「ミトコンドリア」を活性化させたり、筋肉量を増やしたりする作用を持っています。
✅ミトコンドリアが活性化すると、脂肪を燃焼しやすい筋肉になる
✅筋肉量が増えると、エネルギーを消費しやすくなり、脂肪が燃焼しやすくなる
つまり、短鎖脂肪酸(特に酪酸とプロピオン酸)が多いほど筋肉の質や量の高まりをサポートし、結果的に代謝の良い体質に変化するということです。
短鎖脂肪酸を増やすには、食物繊維を補うために色の濃い野菜を食事に取り入れる

では、短鎖脂肪酸を増やすために どのような食生活を意識すればよいのでしょうか?
「理想は、1日あたり25gの食物繊維を摂取すること。ただ、難しい場合は男性20〜22g以上、女性17〜18g以上を目標にするとよいでしょう。現状、日本人の平均摂取量は 11〜16g であり、理想の25gを大きく下回っています。」(青井先生)
水溶性食物繊維を含む食品とは?
・大麦(もち麦)
・海藻類(わかめ、昆布、もずく)
・こんにゃく、オートミール
また、緑黄色野菜(ほうれん草、にんじん、ブロッコリー、パプリカなど)など色の濃い野菜には短鎖脂肪酸の産生をサポートする水溶性食物繊維が豊富に含まれています。
まとめ:
✅腸内環境が悪化すると筋肉にダメージを与え、代謝が低下する
✅短鎖脂肪酸(特に酪酸)が筋肉の質と量を高め、脂肪燃焼を促進する
✅食物繊維を1日20g以上摂取し、短鎖脂肪酸の産生を促進
腸活をして腸を整えることで、体全体の代謝が活性化し、リバウンドしにくい体質へと変化します。食事制限だけダイエットに頼らず、腸活を取り入れた「内側からのアプローチ」で理想の体を目指してみませんか?体の中から変えて、太りにくい理想の体を目指しましょう!
今回教えてくれたのは…
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京都府立大学 生命環境科学研究科 准教授 : 青井渉さん
京都府立医科大学医学研究科助教、京都府立大学生命環境科学研究科助教、カロリンスカ研究所Guest Assistant Professorなどを経て、2017年より現職。食と運動、骨格筋との関わりを研究する運動生理学・運動栄養学を専門とし、スポーツ領域、アンチエイジングを含めた健康領域での応用を目指す。
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ライター
田口 拓矢北海道の網走という田舎町から上京後、放送作家としてバラエティ番組を中心に約10年活動。業界特有の『不健康生活』という名の”劣悪監獄”から脱獄を目指し、様々な健康法を日々チャレンジ中!
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